地域部品商とは?

自動車を設計・開発し、生産するのは自動車メーカーである。

自動車メーカーが生産した自動車を、自動車ユーザー(使用者)に販売するのが自動車ディーラー(販売店)である。

自動車ユーザーは、自動車を使用する過程で「整備」「メンテナンス」「車検・定期点検」「事故車の修理」を行う。これがアフタ―マーケット(自動車を販売した後の市場)である。

この一角に、地域部品商という商売が存在している。

上記の「整備」「メンテナンス」「車検・定期点検」「事故車の修理」を行うために必要な部品を、それらを必要とする自動車整備工場、自動車鈑金工場・塗装工場等に「お届けする商売」である。

なぜ「地域」なのか?

地域部品商に「地域」が付いているのは、「地域を市場にする」という意味である。

自社(自拠点)を中心にして、地域に点在する独立系の自動車整備工場、鈑金工場に交換用及び補修用部品を「お届けする事業者」である。

自動車整備工場の総従業員は2人から10人が殆どであり、日々の入庫台数もそれ程多くはないが、入庫する車両はトヨタ、日産、ホンダ、スズキ、ダイハツ、いすゞ・・・輸入車などメーカーはバラバラであり、車種も乗用車、トラック、バンなど様々である。

今後(明日、明日後)、どのようなメーカーの、どのような部品が必要とされるのかは、整備工場のお客様(自動車ユーザー)の依頼であるから分からないが・・・とにかく、整備工場が必要とする部品を日々、お届けしているのが地域部品商である。

この商売は卸売業か小売業か?

「小売業は最終消費者に販売する商売」であると説明している辞書が多いが、これを信じると地域部品商の販売先は自動車のユーザー(最終消費者)ではなく自動車整備工場であるから小売業では無い・・・だから「卸売業であろう」ということになる。

しかし、総務省の「日本標準産業分類」の説明を見れば。以下のように記されている。

◎ 小売業とは,主として次の業務を行う事業所をいう。

(1) 個人用又は家庭用消費のために商品を販売するもの

(2) 産業用使用者に少量又は少額に商品を販売するもの

(1)は最終消費者への販売である。八百屋、肉屋、パン屋、化粧品店、スーパーマーケツト等がこれに当たる。

(2)は産業用使用者への販売であり、病院に対して治療時に使う薬品、ガーゼ等を販売する小売店、美容院にシャンプーを販売する小売店。これらの業態と同様に自動車整備工場に自動車補修部品、タイヤ、オイル・ケミカルを販売するのが地域部品(小売)商ある。

産業用使用者への販売:専門知識により業務の一部を委託される

産業用使用者への小売は、個人用又は家庭用消費のための商品の販売とは大いに異なる。

産業用の場合はミスがあれば故障・事故などのトラブルに繋がるので専門的な知識が必要である。

自動車部品の場合も、必要な部品のピックアップから品番検索の部分は専門的な知識が必要である。

1つの部品を交換しても、同時に別の部品も交換しておかないと、後日、また故障して再入庫する事例があり、この場合には正しくアドバイスしないと顧客及び最終消費者に迷惑を掛ける。

地域部品商は顧客が必要とする注文する部品を特定し、品番検索によりメーカー及び問屋(商社)に注文する。注文は電子的な方法(オンライン)により実施されるが、その段階で在庫の有無・価格及び納期が特定されるので、顧客の整備工場にお伝えするのである。

産業用使用者への販売:御用聞き的な配送

近年、小売市場において「御用聞き」的な対応が注目されているが、地域部品商は長年、顧客の産業用使用者に対し「御用聞き」を続けている小売業である。

顧客の産業用使用者である自動車整備工場は少人数で運営されており、当然「一番、重要な所にマンパワーを投入したい」と考える。それは本業の自動車整備作業である。部品の調達、品番検索、納期管理から部品庫の管理まで地域の「気心の知れた」地域部品商に委託したいと考える。

地域部品商は「御用聞き」的な対応で、注文を受けたら自社が良いと判断した部品を調達して、お届けするのである。

米国や中国など世界の各地において自動車ディーラーのサービス・フロント(店頭)の前に、多くの地元の整備工場の整備士が部品を購入に来ており、順番待ちの状態で時間を無駄に潰している。

しかし、日本では地域部品商がその役目を果たし、さらに高度なサービスを提供しているのである。

箱で売るのが卸売で、バラで売るのが小売りである。

少量又は少額に商品を販売する・・・これが小売りである。

小売りが必要とされるには、小売りのニーズがあるからだ。

点検の結果、交換を要する部品はプラグが6本なら、バラでそれだけ欲しい。

自動車整備工場は「箱」で買わない。次にいつ使うかわからないものを在庫したくない。

彼らは産業用使用者(ユーザー・消費者)なのである。だから地域部品商はバラで売るのである。

部品商を卸売りと誤解する人は、整備工場は小売店と誤解する。

「小売店なんだから、いくらか在庫すべきだよ。お客さんが来る事だし・・・」

このように「箱」で商品を押し込む業者もある。しかし、小規模の整備工場のマンパワーは限られていて、部品の在庫管理に人手を使うより、その時間を整備作業に集中したいのである。

箱で大量に購入した結果、整備工場の狭い部品庫に中にデッドストックが溜まっているのを見かける事がある。

自動車整備業はサービス業である

総務省の「日本標準産業分類」の説明に以下のように書かれている。

 修理を専業としている事業所は「89 自動車整備業」、「90 機械等修理業」に分類される。修理のために部分品などを取替えても販売とはみなさない。

要するに整備工場は小売店ではない(当然)とわざわざ記しているのである。

そこに部品・材料を販売する地域部品商は卸商ではなく小売店であることは明確なのである。

それでは自動車ディーラーの工場は?

これも日本標準産業分類の解説に、以下のように記されている。 

◎ 次に掲げるものは小売業として分類されるので注意しなければならない。

(1) 商品を販売し、かつ、同種商品の修理を行う事業所は「I 卸売業,小売業」に分類される。

これは販売と付随して修理が発生するものである。

自動車ディーラーのサービス工場はまさにこれである。

ディーラーにサービス工場があっても、彼らは自動車整備業(サービス業)ではない。

彼らの重要な仕事はワランティ整備(メーカー保証整備)があるが、これは物販に付随したものである。

自動車ディーラーと独立系整備工場は産業分類そのものが違うのでから、共通の話題は無く、比較することに意味が無い。

地域部品商の最初の全国団体の名称は「部品小売商」であった

地域部品商という業態は全国に分布している。

その最初の全国団体は1979年(昭和54年)に社団法人の認可を受け、「社団法人全国自動車部品小売商団体連合会」として設立された。しっかりと「小売」の文字が入っている。

しかし、その12年後の1991年(平成3年)に、「社団法人全国自動車部品商団体連合会」(略称・全部連)に改称している。

近年の動向は?

 東京自動車部品商協同組合は、旧組合(東京都自動車部品商組合)の「自動車部品商」の名称を引き継ぎ2011年(平成23年)に設立した。旧組合は1999年6月(平成11年)に全国団体(全部連)を退会している。

 東京市場における地域部品商(小売商)の仕入先は、自動車メーカーが設立した純正部品商社(卸売業)、全国規模の部品商社(卸売業)等である。これらの流通で捕捉できない分野・配送面で便利な分野・価格的に有利な分野については共同購買を実施している。