共同購買の実績

2023年度は組合の共同購買事業が初の年商2億円を超えた記念すべき年度である。組合の発足とともに2011年度からスタートした共同購買事業は、2014年度に5000万円を超え、2015年度に1億円を超え、2016年度には1億5000万円を越えたが、その後は伸率が鈍化した。特に新型コロナ禍の期間である2020年、2021年は販売活動の自粛が求められたため2年間で1 0 % 程度は落ち込んだ。感染症の蔓延を避けるために、お客様に届けた部品を置いてくるだけで、商品の売り込み(対話&交渉・追加注文の獲得)が出来ないのだから売上は伸びないのである。

2022年度は猛暑であった事、さらに後半は多少なりとも感染症の影響が緩和されたことを背景に、対前年比111%と大幅に伸ばすことができた。共同購買実績は1億8419万円と、今まで過去最高の1億8191万円(2019年度)を超えた。

そして、2023年度であるが、6 月、7 月の猛暑で、夏季キャンペーンの対象である空調関係の部品は記録的な売れ行きを示した。これに加えてタイヤ、交換部品・オイル・ケミカルも新商品の投入などで対前年比プラスの成績を収めたことにより年商2億円を達成し、昨年に続き過去最高を更新した。

なお初年度( 2011年)からの共同購入累計は2023年度末で17億2 5 8 1 万円となった。

共同購買事業について

東部協の経済事業は共同購買事業が中心である。この事業は多くの協同組合で実施している。メーカーの協同組合が原材料を共同購買したり、運送業者の協同組合が燃料・油脂・ケミカルを共同購買したり、整備商工組合はオイル、ケミカル(クーラント等)、作業服・安全靴などである。
これらは比較的大きな安定した需要がある限られた特定の品目(汎用性があり、一度にまとまった量が注文可能)を共同で購買することでスケールメリットを出す(安く購入)のが目的である。
東部協も当初はそのような品目を選ぼうとして最初の3年間は試行錯誤した。
納品書・請求書の印刷で需要があるコピー用紙やインクカートリッジ等も研究したが、既にこれらを安価で仕入れられるWebビジネスは存在しており、組合員は困っていなかった。
そうなると商売の元幹になる自動車部品・用品・油脂・ケミカルであるが、当然の事ながら組合員の各社は、それぞれの商品に既存の仕入先があった。先代、先々代の時代から取引頂いている既存の仕入先との良好な関係を切って、組合の共同購買事業を立上げる事は誰も望んでいなかった。
組合員の既存の仕入れ先に迷惑を掛けない商品分野は、タイヤ・ホイールやリサイクル部品など今まで部品商が取り扱っていなかった分野。日々の受注を分析する事で分かる新分野の商品(まだ数は少ないが新規に需要が生まれている商品)等である。

販売促進と支払代行

東部協の実施している共同購買は「支払代行方式」というものである。それぞれの商品を「組合が仕入れ」て「組合員に販売する」ものではない。取引(注文及び販売)は「各組合員」と「組合が認定した仕入先」との間で直接行われている。ただし、認定仕入先から組合員が購入した商品の「代金の支払い」については、組合が代行している。

① 複数の認定仕入先は毎月、各組合員宛の請求書を一括して組合本部に送付する。

② 組合本部はその料金を組合員別に分類して「支払代行計算書」を作成する。

③ 支払代行計算書と、認定仕入先から組合本部に送付された各組合員宛請求書を一括して組合員に送付(毎月5日~6日)。

④ 組合員は月末を目途に組合本部宛に計算書記載の料金を振り込む。

⑤ 組合本部は、組合員より集金した料金を一括して認定仕入先に支払う。この段階で支払代行手数料を収受する。

認定仕入先は組合が責任をもって組合員より集金するので安心して取引ができる。組合員も経営規模の大小を問わず、同一の条件で認定仕入先より商品を仕入れることが出来る。

実は自動車補修部品業界は企業規模の大きい業者を優遇して、企業規模の小さな業者は、いかにお客様に信頼されている優良な業者でも仕入先が「商品を高く卸ろし」たり「販売を拒否する」ことが平気で行われている。また、大手業者は購入量により条件が異なる「レステーブル」を設定していて「企業規模が小さな業者は儲からない仕組」となっている。たとえ儲からないでも、自動車のユーザーの車が故障して困っているから、早く部品を届けてあげよう・・と頑張っているのだが、余りにも現場を無視したやり方である。

せめて「組合の共同購買だけは同一条件にしよう」というのが組合の共同購買の考え方である。現実に組合を開設した時に「弱小・零細業者と同じ条件は御免だ」と加盟しなかった大手業者もある。中堅規模から弱小規模の組合員は比較的、良い条件で商品を仕入ることが可能で、大手業者から相手にされない零細規模の業者でも部品を購入できる。

◆販売促進

さて、認定仕入先は組合と付き合うことでメリットはあるのか?「組合は集金しかやらないで手数料を取るのか?」という問題である。

この問題に取り組むために組合と認定仕入先が共同の販売促進(キャンペーン)を実施し、商品の拡販に貢献している。このキャンペーン企画を担当しているのが経済委員会である。

なお、支払代行手数料は1%~2%であり、年間2億円の商売であっても、年間200万円~400万円程度である。「組合は本部が儲けることを考えずに、組合員が儲かることを考えろ」と組合発足時に東京都中小企業団体中央会に指導された通りにやっているのである。

経済委員会

2013年5月。共同購買事業を拡大させるために新たに組合の若手経営者が中心となり経済委員会が発足した。
お客様からの電話注文を直接受けている。自動車整備工場の社長、メカニックと懇意で市場情報の収集が可能、時間外の配送を受け持ち整備工場との強固な信頼関係のある現場第一線の若手経営者により構成されている。
同委員会は5月から6月にかけて会合を開き、商品の選定、仕入先との折衝を行なった。その後も、継続的に新規商品の導入に向け仕入先の開拓を行なっている。

仕入先の選択

組合員のニーズを考えた場合、一番、重要なのは品質である。産業用使用者(整備工場)に直接販売する業態であるので社長及びメカニックから品質の評価が直接的に入る。
1日に何回も同じ整備工場に部品を配達しているので「品質に問題が無く、もしもトラブルが発生した時は迅速に対応できる」仕入先が必要である。
このように考えた結果、組合員の1社が長期に販売し、評価の高い仕入先の商品を組合員全員に斡旋する方法を選んだ。
組合員の1社が「長く扱ってるけど比較的、トラブルが少ないし、対応も良いよ、価格もまあまあだし・・」と証言し、「それなら組合の共同購買商品にしよう」と内定。その後、組合員に案内すると数社から「わが社も扱ってるよ・・」との声が寄せられ「それなら、さらに安心だ」となる。

配送の問題

次に重要なのは迅速な配送である。ユーザーが車両を使えずに困っているので迅速な修理が求められるだけではない。都区内は地価が高いので、整備工場の敷地面積が狭く、駐車スペースも限られている。部品を早く届けないと「車両がリフトから降ろせないので、他の車両が修理できない」のである。そのため多少の価格差があっても早く手に入る部品を求めている。
一方で卸売り業者の流通倉庫も地価の高い都内に置くことは難しい。東京デポは隣の埼玉県や千葉県に立地している例が多い。緊急時にデポに寄ってからお客の待つ工場に直行という手が使えない。これが地方の部品商であれば、自社の倉庫もある程度の部品を収納できるスペースを持ち、卸売業者の流通倉庫もディーラー街の近所に集中しているので調達が簡単である。組合員は自社の倉庫面積が狭く、都内に小さなデポがある中小規模の代理店が組合のパートナーとして適している。

組合はマージンを取らない(取れない)

東部協は東京という限られた市場の小売業の事業組合であるからメーカーとの直接取引はまず不可能である。全国市場で商売をしている大手商社との取引も同様である。
東京市場密着型の中小規模の販売代理店が仕入先であるから商品の発注・在庫確認・納期確認・配送手配は組合員と仕入先の直接取引とする。組合は「仕入れ」も「販売」も行わない(中間マージンを取らない)。販売促進(商品説明会及びキャンペーン等で拡販支援)と集金業務のみを行う方針とした。
その結果、共同購買金額(年間)を大きく伸ばすことが出来た。
2013年度(平成25)4321万円 
2014年度(平成26)7517万円
2015年度(平成27)1憶2416万円
2016年度(平成28)1憶6082万円

販売促進活動

商品説明会の開催

都内と城東・城北・城南に分けて商品説明会を実施した。これには組合員の代表者だけではなく現場スタッフも参加した。
2011年6月 タイヤ販売説明会
2013年7月 共同購買新商材説明会(城北支部、城東支部、西南支部)
2014年2月 共同購買新商材説明会(城北支部、城南支部、西南支部)
2014年8月 共同購買新商材説明会(城北支部、城南支部、西南支部)
2016年10月 タイヤ販売セミナー&新規商材説明会を開催
その後も新商品の追加に合わせて説明会を開催。2020年以降はWeb説明会に変更。

販売管理

販売促進の要諦は販売管理である。組合員はそれぞれ各社で販売管理しているが、特定商品に限られるとはいえ組合横断の数字が見える事は市場動向の把握に資するデータである。
組合では以下のデータを毎月、メール配信している。
2011年7月 「タイヤ販売ニュース」創刊
2012年4月 「東京自動車部品商協同組合共同購買ニュース」に改題
2015年3月 「共同購買速報」に改題 

販売キャンペーン

 2014年7月に経済委員会が企画した初のサマーキャンペーンを実施、その後、ほぼ毎年開催している。

経済活動優秀店表彰

2015年5月に組合の共同購買累計が2億円を突破した事を記念して、経済活動優秀店表彰を実施(夏季懇親会の会場で表彰)、その後、毎年開催しているが、2022年以降は新型コロナの影響で中止している。

取引先とも相互扶助の関係
助け合って難局を乗り切ろう 

中小企業等協同組合法の第1条に記されているように、事業協同組合は中小規模の事業者が「相互扶助の精神に基き共同して事業を行うための組織」である。
組合員同士は相互扶助の関係であるが、仕入先の各社も中小メーカー及び卸売業であり、相互扶助の精神で「出来る事は協力してやっていきたい」と思っている。
組合の共同購買も2016年までは順調に伸びて来たが、2017年に入ると、伸び率に陰りが出てきた。そこで組合員を対象にアンケートを実施(春の支部会の会場で配布)。組合員の現場の意見を集約し、これを元に仕入先各社と経済委員会との協議を実施した。
<主な議題と改善点>
○WEB検索・発注システムの導入
○緊急時(超急ぐ時)、商品を直接取りにいけるシステムの導入
○特に競合するアイテムでの価格の見直し。
<組合員への説明会>
 取引先と経済委員会が協議した内容と改善策について、合同支部会を開催して組合員に説明した(仕入先各社からのプレゼンと質疑応答)。
 以上の取り組みの結果、2018年、2019年は成長を続けたが、2022年、2021年は新型コロナの対応で販売促進活動を自粛したため初のマイナスとなった。2022年は捲土重来を目指す。